言葉の知られている度合いによって
上智大学 伊藤 潔
2012年3月1日
事物を表す言葉の認知度合いによって,その言葉を文章の中で最初に使う際の表現が微妙に違います.例えば,次の例で考えます.
(a) 電線と電柱を絶縁するために設置されている碍子という部品が破損した.
(b) 電線と電柱を絶縁するために設置されている部品の碍子が破損した.
(c) 電線と電柱を絶縁するために設置されている碍子が破損した.
碍子は,「がいし」と読みます.ひらがなで「がいし」と書かないで,かたかなで「ガイシ」)と表記することもあります.
碍子がよく知られているものか,あるいは,読み手がよく知っている物であれば,(c)の文で十分です.これをもう少し丁寧に書けば,(b)になるでしょう.
(a)は(b)に似ています.しかし,「碍子という部品」と言うと,碍子という言葉があまり一般的に知られていないか,日常にはあまり使われていないので,それを説明しているという感じが出ています.
碍子 について,字通によれば,碍は,「1.さまたげる、さえぎる.2.とめる、へだてる、ふせぐ.」です. 演算子,識別子,乗算子,区切り子 の項で述べた通り,広辞苑によると,「XX子」の「子」は,「動作性の名詞に付けて,そのことを行う人,またはもの」です.碍子は,「妨げるもの」です.