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ことのはの散策

 

entity and identity


                                                                                      上智大学 伊藤 潔

                                                                                            2012年8月4日

 

 スペルが近い entity と identity について述べます.

 entityは,辞書には,「存在物,実在物,存在,実体」とあります.コウビルト英英辞典によると,「他と分離して存在し,それ自身で明確なidentityをもつsomething」とあります.ランダムハウス英和大辞典によると,対応するラテン語は,entitas 「存在する」です.

 entity-relationships diagram (E-R diagram)で, entity を「実体」と訳していることがあります.さて,この実体と訳すことのできるものは何でしょうか.

 情報の世界では,他と分離して区別できるものをentityととらえます.これには,「もの」や「人」など物理的な実体のあるものに加えて,物理的な実体ではない「事物」,「出来事」,「物事」も含みます.概念的な事柄も,その存在をidentifyできれば,entityです.この感覚を持って,「実体」という訳を使えば問題はありません.私は「事物」が一番近いと思いますが,「事物」に,「人」が含まれるかどうか,ということで,「事物」を使うことに若干のためらいがあります.「出来事」は含んでいます.

 以上の意味合いを認識した上で,訳さず「エンティティ」と言っています.

 商品,購入者,座席,催し物,その他,情報処理の対象となるものは,全てentityです.

 ギリシア語由来のidio-も,英語にあるido-,その異形であるid-も,sameやpeculiarの意味を持ちます.sameとpeculiarは,正反対の意味を持つように見えますが,同じものは同じで,違うものは違うという,正しく識別されて区別が付いていることを表します.これについては,identify:同定する,同一視する,識別する  で述べたことと同様です.identityには,このid-が付いています.

 identity は,辞書には,「一致,同一,本人そのもの」とあります.コウビルト英英辞典によると,「あなたは誰か,それは何か,他と区別するcharacteristics」とあります.ランダムハウス英和大辞典によると,対応するラテン語は,identitas 「存在する」です.この意味合いを認識した上で,訳さず「アイデンティティ」と言っています.


 

       
  entity 存在物,実在物,存在,実体,エンティティ  
       
   identity 一致,同一,本人そのもの,アイデンティティ  
       
  entity-relationships diagram (E-R diagram)