critical: 際どい,危険な,重大な,極めて必要な,重要な
上智大学 伊藤 潔
2006年5月25日
criticalは,「際どい,危険な,重大な」という危機や危険を表す場合と,「極めて必要な,重要な」という意味を表す場合があり,よく吟味する必要があります.但し,後者の「極めて必要な,重要な」ものが無ければ,前者の「際どい,危険な,重大な」な状態になることは確かです.
前者の感覚で,マクミラン英英辞典
に,次のように意味が記されています.“difficult to deal with because a small mistake could make very bad things
happen”で,
訳すと,「些少な間違いで甚大な事態を引き起こす危険性があるので,取り扱いが難しい」ということです.
並行なタスクの世界で,critical section / critical region「際どい領域,危ない領域」があります.これは,共有データを複数のタスクで同時に更新したら,データの値や状態が不確かなものになってしまうので,そのようなアクセスの領域をそう呼びます.これを防止するために,同時アクセスの防止,mutual
exclusion「相互排除」を行います.そのようなデータを持つ変数や資源を,critical variable/resource「クリティカルな変数
,資源」と呼びます.
プロジェクトマネージメントで,最大時間のかかる経路を,critical pathと呼びます.
反応の世界で数多く使われています.critical condition「臨界条件
」,critical stage「臨界状態」,critical pressure「臨界圧」など,多々あります.
後者の「極めて必要な,重要な」という意味で次のものがあります.
safety critical systemは,形容詞の係り方の説明の稿で述べたように,system
(that is) critical to safetyということで,安全性にとって重要なシステム,すなわち,「安全性
を最重要視するシステム」です.このようなシステムでは,failure to
safety「ファイルセーフ」の機構を採り入れています.これは,「安全の方向で(安全側で)故障する」,あるいは超訳すると,「安全に故障する」ということになりますが,「機械,システム,コンピュータが故障するときに,人間や社会にとって安全な状態で故障するように設計し,そのような機構や仕掛けにしておくこと」で,「そのような機構や仕掛けが作動すること」を意味します.
mission critical systemは,system (that is) critical to
missionということです.
オックスフォード英英辞典によると,mission
criticalは,「その組織の機能遂行の維持にとって欠くことのできない」という意味です.
mission critical systemは,「mission遂行を最重要視するシステム」です.その組織の
基幹系のシステムです.
critical | 際どい,危険な,重大な,極めて必要な,重要な」 | ||
critical section / critical region | 際どい領域,危ない領域 | ||
mutual exclusion | 相互排除 | ||
critical variable/resource | クリティカルな変数 ,資源 | ||
critical path | |||
critical condition | 臨界条件 | ||
critical stage | 臨界状態 | ||
critical pressure | 臨界圧 | ||
safety critical system | 安全性 を最重要視するシステム | ||
failure to safety | ファイルセーフ | ||
mission critical system | |||