specification(s):仕様化,仕様,仕様書
上智大学 伊藤 潔
2005年10月17日
specificationは「仕様化」「仕様」と,specificationsは「仕様」「仕様書」と訳されます.後者は,ものを表すことが多いです.
日本語の「仕様」は,「やり方,仕方」と「開発,設計で盛り込んだ機能や性能」の2つの意味があります.前者は,「仕様がない,やりようがない,しょうがない」という風にも使われる言葉です.
後者は,日本語で「スペック」といいますね.
日本語の仕様書(“しようがき”と読む)は,「やり方を書いたもの」(おそらくこれが元々の使われ方だと思います)もので,「盛り込んだ機能や性能を書いたもの」という意味ももちます.仕様書(“しようしょ”と読む)は,後者の「盛り込んだ機能や性能を書いたもの」に使うことが多いです.
前者は,instructions for use
(参照:新和英大辞典,研究社)です.後者はspecificationsです.
前者の英語を訳して「使用書」と書くこともありますが,この言葉は日本語には元々はないと思います.「使用+書」でまあいいか,という感じです.でも,仕様書(しようしょ)と音が同じで紛らわしいです.工学の世界では,前者を「使用の手引き」,後者を「仕様書」と言うことが多いです.「使用の手引き」は,またの名をuser’s
manualと言います.
情報の世界の言葉を挙げてみます.
requirements
analysis「要求分析」で,開発対象システムに,発注者,顧客,ユーザが,何をさせることを望んでいるのかのrequirements「要求,要件」を把握します.requirements
specifications「要求仕様,要求仕様書」で,把握した要求を文書化したものです.requirements
specificationで,「要求仕様化」という意味にもなります.
specification
templateは,仕様書を作るためのテンプレート,ひな形です.specification
language「仕様記述言語」は,仕様書を書くための言語です.specification
notation「仕様化のための記法」は,仕様書を書くための記法を定めたものです.
protocol
specifications「通信規約の仕様」は,通信規約を正確に明確に書いたものです.programming
language
specification「プログラミング言語の仕様」は,プログラミング言語の構文,文法を書いたものです.
UML 2.0 specificationをUML 2.0の機能を定めたものです.data format
specificationsは,データ形式を定めたものです.
機械の世界では,specificationsを「諸元」と呼び,諸元表は,機器の機能や性能の一覧を表します.
specifications | 仕様,仕様書 | ||
specifications | 諸元 | ||
instructions for use | 使用の手引き | ||
user’s manual | 使用の手引き | ||
requirements analysis | 要求分析 | ||
requirements | 要求,要件 | ||
requirements specifications | 要求仕様,要求仕様書 | ||
specification template | 仕様書テンプレート | ||
specification language | 仕様記述言語 | ||
specification notation | 仕様化のための記法 | ||
protocol specification | 通信規約の仕様 | ||
programming language specifications | プログラミング言語の仕様 | ||
data format specifications | |||