Mean Time Between Failures (MTBF)
and Mean Time To Repair (MTTR)
上智大学 伊藤 潔
2005年10月4日
システムや機械の信頼性を測るパラメータとして,平均故障時間間隔,平均修理時間,稼働率があります.
平均故障時間間隔は,Mean Time Between Failures (MTBF)の訳です.英語の言葉通り,故障間の平均時間,すなわち,故障が起き,修理されてから,次の故障が起きるまでの時間の平均値です.MTBFが可能な限り大きくなるよう様々な手段で,システムや機械を作ります.
平均修理時間は,Mean Time To Repair (MTTR)の訳です.英語の言葉通り,故障を直すための平均時間,すなわち,故障が起きた時の修理時間の平均値です.MTTRを小さくするよう,修理の手順や体制を整備します.
システムや機械の信頼性を測る時は,遊びの(アイドルの)時間がなくずっと働いているとして,稼働総時間と不稼働時間を考えます.
稼働時間とは,ある期間で,故障中の時間でなく,動いている時間の総和です.不稼働時間は,故障して修理している時間の総和です.
稼働率(availability)は,本当に稼働している時間の割合ですから,次の式になります.
稼働率 = 稼働総時間 / (稼働総時間+不稼働時間) @
また
不稼働率 = 不稼働総時間 / (稼働総時間+不稼働総時間) A
故障の回数をnとします.
MTBF = 稼働総時間/n
B
MTTR = 不稼働総時間/n
C
@とAにBとCを入れたら,
稼働率 = MTBF /(MTBF+MTTR)
D
不稼働率 = MTTR /(MTBF+MTTR)
E
という普通の式です.総時間での割合も,平均時間での割合も同じ値です.
極めて自明の式の変換に見えます.確かに自明です.しかし,これらの式を使う場面を認識する必要があります.
例えば,何かの機械を動かしたとして,問題なく動いていて,時に故障して,ということを繰り返します.測定できるのは,稼働時間や不稼働時間,その総和で,その結果得られる稼働率や不稼働率が,@とAの式です.故障がn回起きていることが,測定できていれば,BとCで,そのnで割ってMTBFやMTTRが算出されます.
というように,以上のプロセスは,集計のプロセス,統計値を録っているプロセスになります.これだけなら,DやEの式は,単なる式の変形になっています.
DとEの式は,そのような統計からきた値からでなく,機械を設計していく中で,理論的な,あるいは経験的な見積もりのMTBFとMTTRであると,DとEから得られる機械の稼働率と不稼働率は,予測値(あるいは期待値)です.
よく計算問題としてDとEを計算するのがありますが,ここで述べたような感覚を持っていないと,どういう状況で,この計算をするのか,わからなくなってしまうことがあります.