explicate, implicate: 明示的と暗黙的な語感
上智大学 伊藤 潔
2007年4月12日
explicate, implicateの持つ明示的な語感と暗黙的な語感に関して述べ,関連の言葉を葉を並記して列挙します.
ジーニアス英和大辞典によると,ex-は「から外へ」,im-は「
中へ」を表す接頭辞です.
explicateは,「顕在化する,明らかにする,明確にする,説明する,解明する」こと,implicateは「意味している,含んでいる
,暗に意味する,暗に示す」ことを表します. 前者とその関連する言葉は,言葉で直接的に説明しているという明示的な語感です.後者とその関連する言葉は,言葉では表さず,暗に意味しているという暗黙的な語感です.
動詞で,imply
「暗に意味する,含意する」があります.
名詞として,explication 「説明」とimplication
「意味合い,含蓄」があります.形容詞として,explicable 「説明できる,解説できる」,explicative
「説明的な,解説的な」,implicative 「含意のある,言外の意味がある」があります.
また,explicit 「明示的な,直接的な」とimplicit
「暗黙的な,間接的な」や,その副詞形のexplicitly 「陽に」とimplicitly
「陰に」は,よく使われます.あることが,言葉で,説明や定義されているときは,explicitに説明,言及されていると言い,そのことを,はっきりとした言葉では
ありませんが,そのこと自体を指して述べているとき,implicitに説明,言及されていると言います.
数学でexplicit function 「陽関数」とimplicit
function 「陰関数」があります.前者は,y=f(x)の形式で書いたもの,後者は,g(x,y)=0の形式で書いたものです.前者は,yとxの関数の関係が陽に見えます.
論旨から少し外れますが,explicateの訳として,あるいは,訳としてではなくても,時々見かける「明るみにする」
という言葉は,日本語の誤用です.
明鏡国語辞典に”「明るみになる」「明るみにする」は、それぞれ「明るみに出る」「明るみに出す」と「明らかになる」「明らかにする」との混同から来た誤用”とあります.
「み」は,ある状態,あるいは,そういう状態を持った場所を示す言葉で,「明るみ」は,明るい場所を示します.「明るみに出る」や「明るみに出す」は,隠されていたことを表に出す, 明るい所に出すという意味で,良いことを表に出すという意味では,あまり使われません.explicateや「顕在化する,明らかにする」は,その対象が,良いことであるとか,そうでないことであるとかは,関係なく,どちらでも使えます.
explicate | 顕在化する 明らかにする 明確にする 説明する 解明する |
||
implicate |
意味している,含んでいる, 暗に意味する,暗に示す |
||
imply | 暗に意味する,含意する | ||
explication | 説明 | ||
implication | 意味合い,含蓄 | ||
explicable | 説明できる,解説できる | ||
explicative | 説明的な,解説的な | ||
implicative | 含意のある,言外の意味がある | ||
explicit | 明示的な,直接的な | ||
implicit | 暗黙的な,間接的な | ||
explicitly | 陽に | ||
implicitly | 陰に | ||
explicit function | 陽関数 | ||
implicit function | 陰関数 | ||