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ことのはの散策

 

context:文脈,前後関係,状況(に応じて)


                                                                                      上智大学 伊藤 潔

                                                                                            2005年10月11日

 contextに,次の説明をつけてみました.

「contextは,contextという言葉が出てくるcontextに応じて,“文脈,前後関係,状況,背景,環境,コンテクスト,コンテキスト”と訳される.」

 contextは,訳は簡単ではありませんが,意味は,それほど難しくありません.

 Oxford Dictionary of EnglishやMacmillan English Dictionaryを参考にして意味をとると,「事象,文,考えが現れている背景,文脈,前後関係,状況のことで,それらによって,事象,文,考えの意味がわかる」ということです.

 いつでも「文脈」と訳すものではありません.文脈は,やはり文についての言葉で,ある文脈の中でその文が出てくる,というものです.「前後関係」と言っても,理屈を言えば,前後左右に関係があるかもしれないし,関係には奥行きもあるし,時間的な関係もあるし.

 的確な言葉がない,訳の難しい言葉です.で,我々がよく使うのは,このような意味を了解した上で,コンテクストと言っています.お勧めということではありませんが.

 例をいくつか挙げます.

  関数の中の計算で,型(たとえば,整数,実数,文字など)によって計算の仕方が異なるが,それを全て可能としておいて,呼び出されるときの型に合わせて計算するものがあります.呼び出す場所,状況で,動的に型が決まるので,その決まった型を,関数実行の際のcontextと言います.

 context switchというのは,マルチタスクを実行するオペレーティングシステムで,タスク毎に,実行中の変化するデータ,実行しているプログラム内のアドレスなどの情報をcontextとして記録しておきで,タスクが切り替わる度に,そのcontextを保存し,これから実行するタスクのcontextに切り替える方式です.プログラムを実行するCPUにcontextを与えて,それぞれのタスクを実行する状況を作り出す,という感じです.

 いろいろな分野で,context-free, context-independent (コンテクスト独立)やcontext-dependent(コンテクスト依存,依存)という言葉が出てきます. 事象や文が置かれている状況に関係なく出てくるのが「コンテクスト独立」,そうでないのが「コンテクスト依存」です.文法の世界では,文脈独立,文脈従属などと訳されます.

 言語学の分野でcontextは,発話を理解するために,話し手と聞き手の間で共有される知識や信念とあります.(「日本認知科学会:デジタル認知科学辞典,ISBN: 4-320-12105-8,共立出版,2004.07」を参照)

 再度,「contextは,contextという言葉が出てくるcontextに応じて,“文脈,前後関係,状況,背景,環境,コンテクスト,コンテキスト”と訳される.」

(^oo^) <2008年2月27日追記>
 最近の言い方で「場の空気」もcontextを表しているようです.そうすると,contextによっては,context-freeは,KYでしょうか.(KYNの方がいいと思いますが)(^oo^)