あっさりと言い切る
上智大学 伊藤 潔
2011年3月22日
技術的な論文やレポートを書くとき,伝えたいことははっきりしているのに,もってまわった言い方をして,何を伝えたいのか,わからなくなってしまうことがあります.また,制限枚数,文字数を超過して,文章を削らなければならないこともあります.
日本語の論文をすっきりとさせるための,用語法についての経験則を書いていきます.あくまで経験則です.万能ではありません.
文章が極めて平易になっていきます.そのため,文章が極めてあっさりとしたものになって,格調がなくなっていく感じがします.そう感じたときは,文章作成上の虚飾が排除されています.論文やレポートの目的は,その内容そのものをわかりやすく平易に伝えることです.格調の高さは,内容そのもので問えばいいことです.
文章が平易になってきたら,論文の内容が十分であったか,伝えたいことを十分に書き込んでいたかを,吟味した方がいいと思います.
(a)受動形を能動形にする
ほとんどの受動態は能動態に置き換えても,何ら違和感がありません.
XによってYされる | XがYする | |
XにYされる | XがYする | |
Xから提供される | Xが提供する | |
Yがなされている | Yされている/Yする | |
記述された設計図を用いて | 記述した設計図で | |
(b)手段はあっさりと
Xを用いて | Xで | |
Xによって | Xで | |
Xすることにより | Xすることで/Xで | |
(c)着目はあっさりと
Xにおいて | Xで | |
Xにおける | Xでの | |
Xについて | Xを | |
Xに関する | Xの | |
Xに関して | Xで/Xを | |
Xにて | Xで | |
X節にて述べる | X節で述べる | |
AにおいてはBについてCによって分類されたDを用いてEの記述を行う | Aでは,BをCで分類したDで,Eを記述する | |
(d)存在をあっさりと
が存在する | がある | |
Xが存在する | Xがある | |
Xが存在し | Xがあり | |
Xが存在しない | Xがない | |
(e)「名詞+サ変,名詞+できる」を使う
Xを行う | Xする | |
効率的な動作を行うために | 効率的に動作するために | |
Yすることによって | Yして | |
Yすることができる | Yできる | |
Yすることができない | Yできない | |
Yしてしまう | Yする | |
Yされてしまう | Yされる | |
XすることによってYすることができる | XすればYできる/XでYできる | |
Xすることが困難がある | Xが難しい/ Xするのは難しい | |
Xすることが容易でない | Xが難しい/ Xするのは難しい | |
Xすることが容易である | Xがやさしい/Xするのはやさしい | |
(f)「ている」でわざわざ状態記述しないで,単純に動作で
示している | 示す | |
示していて | 示し | |
示しており | 示し | |
もっている | もつ | |
していく | する | |
考えてみる | 考える | |
AがBに入ってくる | AがBに入る | |
(g) "is required to" か "have to" かは,厳密には意味が異なるが,
言い換えられるなら右に言い換える
Xすることが必要である | Xしなければならない | |
Xする必要がある | Xしなければならない | |
Xする必要はない | Xしなくてもよい | |