研究と勉強の違いについて−文章作成上の決定的な違い
上智大学 理工学部
機械工学科 情報システム講座
伊藤 潔
1999年6月1日
<研究と勉強の違い:文献の使い方>
文献に書かれていないからできないということではなく,文献に書いてあることで,どこまでのことが得られるのか,更にそれに何がプラスされれば自分の研究の目的が達せられるか(これは元々の文献には書いていない場合がほとんど)を,自分で考えていくことが研究の進め方の1つです.これが研究と勉強の大きな違いです.研究を始めようとする学生に,まずこのこの認識を強く持ってもらいたいと思います.
<文章は,切り張りを一切止めて,自分の言葉で書き下ろす.>
大学の学部の講義のレポートなどでは,テキストに書いてある内容や習った内容を良く整理してまとめるという書き方が許容され,これまでそれなりの評価を得ているかもしれません.勉強の到達度合を測るとということでこれは良しとすべきでしょう.
しかし,研究を行う卒業研究,大学院の修士論文研究では異なります.論文や報告書(これは卒研,修士論文,博士論文,学術論文に限らず,自分の仕事や研究の報告書も含む.大学だけでなく会社に入っても同じ.)を書くとなると,このような書き方は避けるべきです.参考にする文章がないから書けないとか,そういうものではありません.参考にする文章が無いことを,むしろ自分のオリジナリティの発露として歓迎すべきです. 外部の人の文章を使う時には,著作権等,当然かなり気を配らなければなりません.無断引用は絶対に不可です.外部ではなく内部の人,すなわち,共著者や自分の指導者の文章だったら,問題ないという考えもあります.しかし,自分の主張を正しく述べるために,共著者達の文章を,効果的に使っているでしょうか? よくあるそのような文章では,自分の主張を伝えているというようには読めません.全体として,規定頁に収まってはいたとしても,自分の主張したいことが書き込んであるとはいえないことが多く,規定頁に収まって良かったな,という感じが見え隠れします.
自分の研究したことは,他人の文章の切り貼りなどせず,自分の文章で綴ることが重要です.研究は,調査とイコールではありません.