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理工系大学院における情報処理の研究と教育の充実

 

  上智大学 理工学部 

<現在>  機械工学科 情報システム講座 

伊藤 潔

1987年秋

理工学部25周年記念誌

 

     電子計算機を構成する多様な技術が著しく進歩し,10年前の大型計算機の計算速度や記憶容量が,我々の身近にある低価格のパソコンでほぼ得られるようになっている.我が上智大学でも,この数年間に,理工系の研究室にかなりの数のパソコンが入って研究に活用され,また教育においても,学部学生に対する情報処理教育に,数十台の端末装置や数十台のパソコンが活用されている.

 筆者は,大学院組織の中では機械工学専攻に属し,機械工学の大学院生や卒研生と共に,シミュレーション手法や図面処理技法など,かつては大型計算機を用いていた研究を,今やパソコンベースで,Lisp,Prolog,Pascal,C,各種グラフィックス言語などの新しい言語を用いて進めている.

 このようなパソコンが更に高機能のいわゆるワークステーションに置き代わる時期も近い.

 以上の現状の中で,理工,特に工科系の大学院の研究を更に飛躍させるために,これまでの学部での情報処理教育の改善に加えて,大学院でも体系的な情報処理教育が必要であると考える.これは,工科系の大学院生に対して,これまでの専門教育に加えて情報処理技術者としての素養を与えることを意味する.

 工科系の研究では,どの専門分野でも設計や分析,実験の計画・実施・整理など,多岐にわたった作業が必要である.これらの作業には,これまで培ってきた各専門分野の技術や知識の更なる発展やその活用と共に,今や身近となった情報処理機器の活用が重要な要素となる.これは,研究にまつわる様々な作業の効率化やシステム化をいかに図り,それにより各々の分野の研究をいかに発展・飛躍させることができるか,ということを意味する.

 このためには,大学院においても,新しいプログラミング技術や言語を導入した,いわゆるプログラミング実習の講義はいうに及ばず,情報処理の新しい技術や知識,情報処理機器を組み込んだシステム化の技法などを柱とした,専門分野にとらわれない横断的な講義が,必要となると考える.

 学科や専攻にとらわれない,大学院での情報処理教育の教育体制の確立と情報処理研究の交流の促進を図る時期が来ていると考える.

 さて,次のXX周年の記念文集の原稿では,以上についてどのように書いているのであろうか・・・.